7月6日㈯に本校8F記念ホールにて夏期きもの大学を開催いたしました。
きもの大学とは毎年夏と冬の年2回、本校の着装講師陣による帯結びのデモンストレーションや本校の外部からきもの文化に関する様々な講師をお招きして講義を行っていただく本校の恒例行事です。
まず午前の部は本校着装主任講師の寺屋先生を中心とした着装教授会の講師の方々による創作帯結びの講義とデモンストレーションです。
生徒さん達も真剣なまなざしで手順を見ています。
講義の後半は毎回ステージ上で教授会の先生方が参加した生徒さん達に直接指導を行う時間もありました。
昼食休憩を挟んで午後からは石川県の伝統工芸である牛首紬を生産している西山産業開発株式会社、牛首紬・加賀乃織座代表取締役社長の西山博之先生に「牛首紬・伝統の継承と革新」というテーマで講義を行っていただきました。
西山先生には牛首紬の産地の歴史や伝統、生産技法の伝承に関する講義に加えて、牛首紬の海外への挑戦、エルメスなどの海外高級ブランドのバイヤーやデザイナーとの出会い、パリコレへの挑戦、プルミエール・ビジョンなどへの出展、デザイナー寺西俊輔氏との出会いとコラボレーションなどさまざまな角度と視点から牛首紬の未来に向けての取り組みをご説明いただきました。
西山先生は本校の清水とき学校長とも親交が深く、かつて牛首紬が今までの紬の常識を覆す白生地の後染めで取り組んだ際に批判的な意見が多い中で新しい試みで面白い、やってみたらいいと評価してくれたのが清水先生だったというエピソードもお話しして下さいました。
戦後きものデザイナーとして化繊のきもののデザインを手掛けるなど新しいことにチャレンジしていた清水学校長だからこそ、新しいことに挑戦しようとしていた西山先生を応援したかったのではないかと思いました。
また西山先生は海外への挑戦の経験を通して見えてきたこととして、変革を恐れないマインドを持つことの大切さ、変革する時は「変えるべきもの」と「変えてはならないもの」が必ずあるということ、自分(自社)のアイデンティティをしっかりと確立することの大切さについて解説していただき、これからの目標として牛首紬が産業として成立する形で次世代に継承していくことを目標としていると熱く語られました。
講演の最後に西山先生から生徒さん達へ「伝統とは革新の連続であり、変革を恐れずにチャレンジすることが大切であること、そしてそのためにはまずは一歩踏み出すことである」という力強いメッセージをいただきました。これから社会にはばたく生徒さん達にとって大きな心の支えになってくれる言葉だったのではないでしょうか。
また当日は西山先生に牛首紬に使われる玉繭や紬糸、訪問着や付け下げ、帯、着尺などをご持参いただき、会場に展示させていただきました。生徒さん達もこれだけの数の牛首紬を間近に見るのは初めてだったのではないでしょうか。講義終了後にたくさんの生徒さん達が作品の傍に来て熱心に見学していました。
講演の締めくくりとして西山先生に1月に震災のあった珠洲や能登の現在の様子の画像を見せていただきました。震災から半年が過ぎた現在もまだまだ復興には程遠い現状を報告いただき、少しでもいいから、時々でもいいから被災地に住む人達のことを想っていただければというメッセージを頂戴いたしました。
テレビのニュースなどでは復興へ向けての取り組みが報道されていますが、実情はまだまだ復興には程遠いというのが現地に住む方々の正直なお気持ちだとお察しいたしました。
このブログをご覧いただいた方々にも折に触れて石川の被災地のことを気にかけていただき、何かしらの行動につなげていただければ幸いでございます。