本学園1Fのエントランスには月替わりで四季折々のきものが展示されています。現在展示しているのは「紗合わせ」のきものです。
紗合わせはきものが袷(あわせ)から単衣(ひとえ)に移行する間のほんのわずかな期間だけ着るきものです。最近では9月頃の単衣から袷に移行する時にも着ていいことになっていますが、やはりこの梅雨の時期の方がしっくりとくる気がします。
一説によるとそれまでごく限られた人達だけが着ていたものが昭和40年代に新橋の芸者衆が「東おどり」で一斉に紗合わせを着て評判になったことをきっかけに普及していったと言われています。
表の紗の生地を通して裏の生地に描かれている文様が透けて見えるのが何とも言えない涼感を感じさせます。
かつては紗合わせの裏生地に文様を描く代わりに和紙で作った金魚を数匹糸で吊るしてから仕立てたものもあったそうです。
表の生地のモアレの効果で水面下を金魚がひらひらと泳いでいるように見える遊び心満載のきものになったのではないでしょうか。
きものを着る人だけでなく、そのきものを着ている人を見た人にも涼感を感じさせてくれるのが紗合わせの特徴と言えるでしょう。日本人ならではの気配り、心遣いですね。